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第15回 「メンタルヘルスの予防に関する組織対応」

誰でも少なからずストレスを抱えており、ストレスは過度に溜めず上手に付き合っていくことが重要です。しかしながら、日々の忙しさの中で、気付かぬうちに溜めてしまうのがストレスでもあります。ストレスの原因は多種多様であり、職場に限らず私生活の中にも存在するため、会社が関与できぬまま従業員がメンタルヘルス不調に陥ることも多いようです。

従業員の「心理的安全性」に影響を与える要因には、「仕事の満足度」、「生活の満足度」、「ストレス」などがあり、これらの要因によりメンタルヘルス不調となり、出勤しているにも関わらず十分なパフォーマンスを発揮できない状態(プレゼンティーズム)となり、事業主側では労働生産性が低下する等の損失が発生していることが明らかになっています。

前号では、心理的負荷を抱えながら業務に従事する従業員の問題解決策としてストレスチェック制度をご紹介しましたが、その効果は連動する企業内での組織的な取り組みの有無やその内容によって異なるようです。

そこで今号では、メンタルヘルスの予防に関する組織対応を取りあげます。

医師10万人以上(国内医師の3人に1人)が参加する医師専用コミュニティサイトであるMedPeer(メドピア)*1が会員医師を対象に「ストレスチェック制度がメンタルヘルス不調の一次予防に効果があるか?」と質問した結果、最多回答は「どちらかと言えば効果はない」(45.3%)であった。
これに「まったく効果はない」(16.8%)を合わせると6割以上の医師が「効果はない」と回答した。
この背景には、「ストレスチェック後の職場改善の対策が無い限り、一次予防にはならない」等の声があった。

そもそも、ストレスチェック制度の主たる実施目的は「労働者自身のストレスへの気付きを促進すること」および「ストレスの原因となる職場環境を改善すること」にあり、会社全体で組織的にストレスマネジメントに関わるスキームをどの様に構築し、運営するのか?によってその効果が大きく異なるものと考えます。

事業場におけるメンタルヘルス予防対策
事業場におけるメンタルヘルス予防対策は、3つの段階に分かれます。

(1次予防)メンタルヘルス不調の未然防止:
メンタルヘルスに関する正しい知識、ストレスに気づく方法、ストレスに対処する方法、良好な人間関係を構築する方法等に関する教育研修の開催、事業場内外における相談窓口の整備、ストレスチェックの実施などの取り組みを指します。

(2次予防)メンタルヘルス不調の早期発見ならびに早期治療:
メンタルヘルス不調の早期発見ならびに早期治療を指します。
具体的には、上司や産業保健スタッフなどによるメンタルヘルス不調者に対する相談対応、定期健康診断による早期発見とその対応等が該当します。

(3次予防)職場復帰支援ならびにメンタルヘルス不調の再発防止:
メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰支援およびメンタルヘルス不調の再発防止を指します。
具体的には、休職者に対する精神的なフォローの実施、職場復帰支援プログラムの実施、休職者の主治医との連携、メンタルヘルス不調者の職場復帰時における対応方法に関する管理者研修の実施等が該当します。

パワハラ防止法では、事業主の講ずべき措置等が義務化され、従業員からの相談に適切に対応できる窓口設置や体制構築が求められているものの、その運用には未だ多くの課題があるようです。
例えば、「24時間健康相談ダイヤル」等の外部リソースを活用して従業員からの相談窓口の充実化に取り組んでいるものの、実際にそれらを利用する従業員があまり多くない等のケースです。

この様な場合には、会社全体の取り組みを「見える化」するため、従業員に対する周知を十分に行う必要があります。そのためには、メールでの案内、社内掲示板への資料掲示、個人カードの配布等が有効です。「従業員からの相談窓口を設置する」等の全社的な取り組みに対する従業員からの認知度向上を図り、これらを従業員が利用しやすい環境を整備することが求められます。

MedPeer(メドピア)*1
メドピア株式会社が運営する、医師専⽤コミュニティサイト「MedPeer」 https://medpeer.jp

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