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第13回 「パワーハラスメント法への対応」


最近は「ハラスメント防止をテーマとする仕事が増えており、建設業の安全大会や研修会でも労働安全と併せてメンタルヘルスやハラスメントを含めた形で講演依頼を受けるようになりました。

この背景には、今年4月1日から「改正労働施策総合推進法」に基づいて「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されたことがあり、労働紛争や職場環境の悪化による人的損失リスクや会社全体の生産性低下などを危惧する経営者が増えてきていることがあります。

そこで今号では、パワハラ防止法において「事業者が講ずべき雇用管理上の措置等」について取り上げます。本ニュース第8号でも触れましたが、いじめ・嫌がらせによる労働紛争の増加や人的損失リスクが企業経営に与える影響が背景にあって平成29年3月に閣議決定された「働き方改革実行計画」を契機に各種労働関連法が改正され、「パワハラ防止法」が施行されました。

本改正法に「パワハラの定義」や「職場のハラスメント対策における事業主の義務」が明記されたことにより、今後、多くの企業が「パワハラ対策への取組み」を本格的に進めていくことになるものと考えます。

  • 事業主の講ずべき措置等
    パワハラ防止法は改正労働施策総合推進法*の「第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等(雇用管理上の措置等)第30条の2の条文中に明記されています。この集約された条文から具体的な対策を読み取ることが難しいこともあり、厚生労働省は、パワーハラスメント防止指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)を公表し、パワハラ行為に対して以下の対応を行うことを事業主に義務付けています。

    1. 自社方針を就業規則などに規定し、従業員へ周知、啓発を行う
    2. 従業員の相談に適切に対応できる窓口と体制を構築する
    3. 事後に迅速かつ適切に対応する(事実確認、被害者・行為者への適切な配慮・措置、再発防止)
    4. プライバシー保護に基づき、相談者・行為者等が不利益を被らないように周知する、その他必要な措置を行う

    第九章の条文には、男女雇用機会均等法と同様に労働紛争解決に向けた措置もあり、都道府県労働局長は紛争当事者から解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができます。
    また、紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合においては、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会に調停を行わせることとしています。
    この措置義務に違反した場合、直接の罰則規定はありませんが、かかる義務違反は厚生労働大臣の勧告の対象となる上、この勧告に従わない場合は、その旨を公表することが明記されています。
     
本改正法によって「パワハラの定義」に法律上の根拠が与えられたという点には意義があると言えますが、「パワハラであるかどうかの判断」や「その解決に向けての対応」には様々な課題があるようです。
「職場のパワーハラスメントに関する実態調査(令和2年度厚生労働省)」では、ハラスメントの予防・解決のための取り組みを進める上での課題として、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(65.5%)の割合が最も多く、「発生状況を把握することが困難」(31.8%)、「ハラスメントに対応する際にプライバシーを確保することが難しい」(23.5%)、「管理職の意識が低い/理解不足」(23.0%)、「一般社員の意識が低い/理解不足」(20.2%)、「適正な処罰・対処の目安が分からない」(19.5%)などの課題があることが分かりました。
 
「パワハラであるかどうかの判断」が難しい理由のひとつには、パワハラは受け手が不快に感じるかどうかだけでは判断できるものではなく、業務上の命令や指導に対して受け手が不快と感じた場合であっても、業務の適正な範囲で行われた言動である場合にはパワハラに該当する訳ではないといった点があります。

そのため、企業は個別の事案について、様々な要素を総合的に考慮しながら丁寧に事実確認を行い、問題解決への道を探っていくことになります。
 


改正労働施策総合推進法*
第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等
(雇用管理上の措置等)
第30条の2 
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

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