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第7回「財務会計と管理会計」

法人における保険の役割は、財務リスクの移転であり、財務諸表を守る為に最適な保険提案を行う事が我々保険代理店の使命ですが、そもそもこの財務諸表を苦手とする方がこの業界には多いようです。今回は財務の基礎知識として財務会計と管理会計について話をしたいと思います。まず、財務会計とは法律に基づいてルール通りに行う会計であり、会社法・金融商品取引法・税法の3つの法律に基づく財務諸表がありますが、普段私達が目にしている決算書の殆どは税理士が作成した税法に基づいた決算書だと思います。しかし、これらの決算書は全て過去の情報に基づいたものであるため、「過去会計」とも言われ、経営の意思決定には余り役に立たないと言っても良いでしょう。

一方で、管理会計とは法律に縛られることなく、経営者の求める情報を把握し、経営に役立てる会計であり、将来ビジョンや計画の達成のための正しい意思決定を目的としているため、「未来会計」という言い方をします。そして、保険設計に当たって必要となるのは正にこの管理会計となります。保険が対象とするリスクは未来にしか発生しないため、過去の決算書は参考にする必要はありますが、やはり未来予測に基づいた提案が必要となります。リスクマネジメント視点の保険提案を実践するには、未来に発生するリスクとその時の財務インパクトを想定することが必要不可欠ですが、起きた時の財務インパクトは財務諸表の数字をそのまま使うことは出来ないものも沢山あります。

具体的には、財務諸表の建物や設備什器の金額は、時価や再調達価格と異なる場合もありますし、売上だけを見ても事業中断のリスク量が見える訳ではありません。しかし、それらの数値が無ければ予測が出来ないのも確かであり、建物についてはどの程度の損失を想定し、再調達が必要か否かによって、事業中断は変動費の割合や中断期間の想定によってリスク量は異なります。つまり、財務諸表の数字を活用して未だ発生していないリスク量を予測する事が重要なのです。また、財務諸表がなければ、どこまでリスクを保有出来るかといった財務力を見ることが出来ません。適切な保険提案には、決算書の数値を参考にリスクによる財務的な影響を予測し、保有可能額との比較の中で保険の設計を行う必要があるため、今後の保険代理店には財務(特に管理会計)に関する知識が必要不可欠でしょう。

特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会
副理事長 松本一成 著

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