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RMCAリスクマネジメント塾

第6回「リスク保有の選択肢」

保険の企業に対する基本的な価値は財務リスクの移転です。具体的には資産の減少の補填、費用の損失の補填、将来の得られるべき収益・収入の補填です。一般的に損害保険については「モノ」、生命保険については「ヒト」に掛けるイメージがあるかもしれませんが、企業の場合は財務諸表を守る事が目的であり、極論ではありますが、「モノ」が壊れても、「ヒト」がケガをしても財務諸表に影響が無いのであれば保険は必要ありません。また仮に損失が発生しても、財務的にリスクが保有出来るのであれば保険の必要は無いでしょう。

「保有」とは損失を自社や自社グループの利益や自己資本等で対応する事であり、実際には会社としてどこまでリスクを保有出来るか?保有する覚悟があるか?を明確にしなければ、企業の効率的な保険活用は実現しませんし、財務的な矛盾も発生します。具体的には、A社が500万円で車を購入し車両保険に入らなかった場合、保険を中心に考えるとA社は車両保険に入らないという意思決定をしたとなりますが、財務を中心に考えるとA社は500万円のリスクを保有するという意思決定をしたことになります。しかし一方で、A社は1日通院3,000円、入院5,000円といったリスクを保有せず、保険に入っている場合もあります。

このように、一つのリスクに一つの保険という部分最適が中心になるとその会社の財務力を無視した提案に繋がるので注意が必要です。お客様を守る為には、まず保有基準を明確化し、保有すべきリスクは保有し、保有出来ないリスクはしっかり保険に移転をする事が大切です。また、積極的にリスクを保有という選択は保険の効率化と共に、リスクコントロール機能が高まり、事故が減少するという効果も考えられます。企業のリスクを悪戯に保険に移転する事が最善とは限りません。保有という選択肢を持つ事によって他代理店との差別化に繋げていきましょう。


特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会
副理事長 松本一成 著

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