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RMCAリスクマネジメント塾

第12回「取締役の義務と責任」

前回、会社法の改正についてお話しをさせて頂き、より厳しく取締役の責任が追及される一方で、優秀な人材に取締役に就いて頂き、積極的にチャレンジする経営を行って頂くために必要となる会社補償やD&Oを活用に必要な手続規定等が新たに設けられることを説明させて頂きました。今回は、D&Oの対象となるような取締役の義務と責任には、どのようなものがあるのかについて説明したいと思います。取締役が負っている責任は大きく「第三者に対する責任」と「会社に対する責任」の二つの責任に分けられますが、これらの責任を果たせない場合は第三者や会社から賠償請求を提起される可能性があります。

まず、第三者に対する責任は、会社役員の不適切な業務執行により第三者(取引先、株主、従業員、競合他社等)に損害が発生した場合に民法上の一般の不法行為責任や会社法上の特別責任に基づいて発生する損害賠償責任であり、責任が果たせない場合は第三者訴訟が提起される可能性があります。一方、会社に対する責任は、取締役が会社との委任関係の中で負っている「善管注意義務」「忠実義務」「競合避止義務」「利益相反回避義務」「監視・監督義務」等の義務の債務不履行や取締役の違法行為、経営判断のミス等によって会社に損害を与えた場合に発生する損害賠償責任であり、責任が果たせない場合は取締役が会社から損害賠償請求を提起される可能性があります。

しかし、取締役間の仲間意識から会社が賠償請求をしないケースがあるため、株主は会社に対して役員等の責任追及の訴えを提起するように請求ができ、この請求の日から60日以内に会社が訴えを提起しない場合には、株主が会社に代わって「株主代表訴訟」の形態で賠償請求を提起する事が可能となっています。公開会社の場合は6か月前から継続して株式を保有する株主に限られますが、非公開会社には要件がなく、訴訟手数料についても請求額に関わらず一律13,000円となっているため、中小企業においても多く発生しています。今回の法改正による取締役の責任の厳格化、社外取締役の義務付け、D&O保険の位置付けの明確化により、今後は益々D&O保険の必要性が高まるでしょう。


特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会
副理事長 松本一成 著

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